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VINTAGE CARE / MATERIAL TAG
ヴィンテージ古着の素材タグを読む|混率と洗い方の判断

古着のタグは、新品のタグほど親切ではありません。表示が古い規格のままだったり、そもそも切り取られていたり。ぼくは、書いてある数字をそのまま信じる前に、何が書かれていないかを先に確認します。
ぼくならこの順で読む

素材タグを見るとき、多くの人は組成の数字だけを見ます。でも古着では、その数字が今の制度で書かれたものとは限りません。順番を決めておくと、読み違いが減ります。
- 組成表示を読む綿100%なのか、混紡なのか。ここで終わらせないのが肝心です。
- 洗濯表示の年代を見る記号が古い規格のままなら、その服は少なくとも一定の年代より前のものです。
- 製造国の表示制度を考える日本製と米国製では、何を書く義務があるかが違います。
- いちばん弱い繊維を探す混紡なら、比率が小さくても弱いほうが洗い方を決めます。
- タグ以外を見る裏地、芯地、ゴム、コーティング。組成表示に出てこない部分が先に壊れます。
「綿100%」でも、綿だけとは限らない

これは制度として決まっている話です。繊維製品品質表示規程の第七条第2項では、装飾・補強・縁取りなど特定部分の効用を増すために使われた糸や生地で、混用率が5%以下のものは、組成繊維から除いて表示してよいとされています(第十条第2項の場合を除く)。
つまり「綿100%」と書かれていても、装飾のラメ糸や補強のステッチ糸が別の繊維で入っていることがあり得ます。これは偽装ではなく、規程どおりの表示です。
古着で効いてくるのは、この「表示されない5%」がしばしばポリウレタンやラメだということです。綿100%のつもりで洗って、袖口のゴムだけ死ぬ。ぼくが混率の数字を鵜呑みにしないのはこれが理由です。
そもそも、書いてある数字に幅がある
混用率の許容範囲は、同じ規程の第九条と別表第五で決まっています。以前この記事では「一次資料まで到達できなかった」と書いていましたが、告示の原文にあたって読み取れたので、そのまま置きます。
| タグの書き方 | 法令が認める幅 | 実際にあり得る値 |
|---|---|---|
| 「綿100%」(毛以外の繊維) | マイナス1%以内 | 綿99%でも「綿100%」と書ける |
| 「毛100%」 | マイナス3%以内 | 毛97%でも「毛100%」 |
| 「毛100%」+くず糸・ノイル・反毛を使った紡毛式/空紡式の糸である旨の付記 | マイナス5%以内 | 毛95%でも「毛100%」 |
| 「綿70% ポリエステル30%」のような5の倍数 | プラスマイナス5%以内 | 綿65〜75%、ポリエステル25〜35% |
| 5の倍数でない数値 | 毛または羽毛の間はプラスマイナス5%以内、それ以外はプラスマイナス4%以内 | — |
| 「綿70%以上」と付記 | マイナス0% | 70%を下回らない |
「綿70% ポリエステル30%」は、綿65%かもしれない。これも違反ではありません。ぼくが混率を比率として厳密に扱わないのは、条文がそもそも厳密を求めていないからです。数字を疑うというより、数字に幅があることを前提に読む。そう構えておくと、あとで裏切られません。
逆に言うと、「以上」と付記された数値だけは下振れしません。「綿70%以上」なら70%を割らない。タグでこの書き方を見かけたら、そこは信用していい数字です。
「毛100%」は、羊毛100%という意味ではない

ここは知ったとき、ぼくがいちばん「へえ」と思ったところです。規程の指定用語の表を見ると、カシミヤもモヘヤもアルパカもアンゴラも、らくだも、分類はぜんぶ「毛」です。
| 繊維の種類 | 規程が定める指定用語 |
|---|---|
| 羊毛 | 毛/羊毛/ウール/WOOL |
| カシミヤ | 毛 カシミヤ |
| モヘヤ | 毛 モヘヤ |
| アルパカ | 毛 アルパカ |
| らくだ | 毛 らくだ/キャメル |
| アンゴラ | 毛 アンゴラ |
そして表の備考には、こう書かれています。分類が明らかで、かつ種類が不明である繊維については、繊維の名称を示す用語や商標を省略できる。つまり「毛」とだけ書いてよい、という根拠が法令の側にあります。
ノーブランドのヴィンテージニットで「毛100%」とだけ打たれたタグを見たとき、ぼくがすぐに羊毛と決めつけないのはこれが理由です。カシミヤかもしれないし、アンゴラかもしれない。種類が書いていないことは、書き忘れとは限りません。
ヴィンテージのウールを触っていると、同じ「毛100%」でも手触りがまるで違うことがあります。産地や紡ぎ方の違いもありますが、法令の許容範囲そのものが、その差を織り込んでいる。タグの数字は、思っているほど細かいことを言っていません。
再生繊維の欄も同じ構造です。レーヨンとキュプラは、どちらも再生繊維ですが指定用語が分かれています。アクリルは、アクリルニトリルの質量割合が85%以上のものだけが「アクリル」で、85%未満は「モダクリル」になります。タグの用語は、感覚ではなく分類で決まっています。
洗濯表示の記号は、年代を語る

日本の洗濯表示は2016年12月1日に大きく変わりました。旧JIS L 0217の22種類から、ISOに合わせた新JIS L 0001の41種類へ。桶・三角・四角・アイロン・丸の5系統で構成されます。さらに2024年8月20日にも改正があり、手洗い専用のマークなどが加わっています。
ここが古着では手掛かりになります。旧記号のタグが付いていれば、その服は少なくとも2016年より前に流通したものと考えられます。経過措置があったので直後の混在はありますが、年代の目安にはなります。
| タグの状態 | 読み取れること | ぼくの扱い |
|---|---|---|
| 新記号(41種の体系) | 2016年12月以降に流通 | 表示どおりに従う |
| 旧記号(「洗濯機」「弱」など文字併記) | 2016年より前の流通が有力 | 年代の傍証にする。洗い方は素材から考え直す |
| 英語のみ・記号なし | 海外製の可能性 | 製造国の制度を確認(次章) |
| タグが切られている | 年代情報なし | 推測を確定にしない(最終章) |
海外製は、書いてある情報の種類が違う
アメリカ製の古着でよくあるのが、組成は書いてあるのに洗い方が書いていないタグです。これには制度上の理由があります。米国で繊維製品に組成表示を義務づけたのは1960年のTextile Fiber Products Identification Actですが、これは組成の表示であって、洗濯方法の表示義務は含みません。洗い方の表示を求めるCare Labeling Rule(16 CFR 423)は1971年に制定され、1972年に発効しました。
英語で書いてあっても、日本の表示かもしれない
もうひとつ、混同しやすいところがあります。規程が定める指定用語には、はじめから英語表記が入っています。綿は「綿/コットン/COTTON」、羊毛は「毛/羊毛/ウール/WOOL」、絹は「絹/シルク/SILK」。レーヨンは「レーヨン/RAYON」、アセテートは「アセテート/ACETATE」、ナイロンは「ナイロン/NYLON」、ポリエステルは「ポリエステル/POLYESTER」です。
つまり「COTTON 100%」と英語だけで書かれていても、それは日本の規程に適合した表示であり得ます。英語イコール海外製ではありません。ぼくは製造国を、組成の言語ではなく製造者の表示や洗濯表示の体系のほうから見ます。
だから、1972年より前のアメリカ製には洗濯表示がないことがあり得ます。ヴィンテージのスウェットやミリタリーで「組成だけのタグ」を見かけたとき、ぼくはそれを不備ではなく年代の手掛かりとして見ます。
混紡は、比率ではなく弱さで読む

ここが実務の核心です。綿70%・レーヨン30%の服を「ほぼ綿」として洗うと失敗します。
水を吸うと強度が著しく落ちます。濡れた状態で扱うほど傷みます。古着では特に注意。
アルカリに弱く、摩擦と温度でフェルト化して縮みます。戻せません。
空気中の水分で加水分解し、製造から2〜3年で表面化します。保管の巧拙とは別に寿命が来ます。
「混紡は弱いほうの繊維に合わせる」という原則そのものは、実務では広く共有されています。ただしぼくが探した範囲では、これを名指しで定めた条文や規格条項は見つけられませんでした。新JISの目的(回復できない損傷を起こさない最も厳しい処理を示す)からの妥当な推論、というのが正直なところです。原則としては信頼していますが、「規格でそう決まっている」とは書きません。
デニムのように綿が主体でも、ストレッチ入りならポリウレタンの寿命が全体の寿命になります。洗い方の具体はデニムの洗い方にまとめました。
タグがない服は、推測を確定にしない

ヴィンテージではタグ欠落は珍しくありません。前の持ち主が切ったのか、もともと無いのか。触感、光沢、シワの戻り方から素材の見当はつきますが、見当は見当のままにします。
タグがないときのぼくの決め方は単純です。いちばん弱い可能性に合わせて扱う。手洗いか、洗わずに部分的な処置で済ませるか、専門店に相談するか。値段と状態に納得しているなら素材不詳のまま買いますが、扱いは慎重側に倒します。
シミがある個体をどう判断するかは古着のシミ抜きの記事に分けてあります。素材が読めないシミは、家庭で触ってよい範囲がさらに狭くなります。
タグと実物が違う可能性も、頭の隅に
古い個体では、タグの表示と実際の組成が食い違うこともあり得ます。ただしその頻度を示す調査は見つけられませんでした。どのくらい起きるのかは分からない、というのが今の到達点です。
